めらブログ

国語科の文法教育、作文教育、そのほか教育に関すること。ブログ名をすこし変えました(本名がずっと出るのがはずかしくなって。。。)

全国大学国語教育学会秋期オンライン大会について

 あした10月31日(土)および11月1日(日)に、第139回全国大学国語教育学会秋期大会(オンライン)が開かれます。コロナ禍の影響で、各学会の大会が対面では開催できない状況になっています。それは国語教育の分野も同様です。今回、全国大学国語教育学会としてははじめて、フルサイズの学会をオンラインで開催することになりました*1

 

 今回の大会については、わたしも実行委員のひとりとして関わらせていただいているのですが、ほんとうに魅力的な企画が多いです。そのうちの一つ、公開講座II(2日目15:00-)は、「詩の書き方は教えられるか?」というテーマのもと、ワークショップ形式で実施予定です。当日は、Zoomウェビナーを用いて「ラッキーディップ」というワークショップを行います(ワークショップは事前申し込み、すでに申し込みは〆切済)。これは、まず10行の詩を書いて、その詩を1行ずつバラバラの短冊にします。次にその短冊をまとめて袋に放り込み、10枚の短冊を取り出します。そのうえで、自分に分け与えられた10行を並びかえてまた別の詩を作る、という活動です。この方法だと、「うまくできなくても運のせいにできる」「『自分の思い』をいったん傍において、言葉そのものと向き合うことができる」といった長所があります。

 

*ラッキーディップについては、当日コーディネーターを務める軽井沢風越学園の澤田先生のブログに詳しいです。

 

askoma.info

 

 

 これだけでもすでに面白いのですが、実はこのワークショップに関連して、事前公開動画も公開されています。この動画は、当日行われるワークショップを歴史的、理論的により大きな文脈の中に位置づけるものになっています。

 

www.youtube.com

 

 たとえば鹿児島県立短期大学の竹本寛秋先生は、「詩の作り方」についての歴史的変遷について解説しています。竹本先生によれば、「詩の作り方」については詩の外形的分類を行う明治期→詩創作と内面を透明につなげる大正期(つまり詩創作の指導は不可能だとする時期)→詩を認識の方法としてとらえる昭和期(たとえば書きたいことがあってその後ことばが見つかるのではなく、ことばになった後ではじめて書きたいことがわかるとする時期)という変遷を経ています。そしてこの日行われるであろうワークショップは、このような変遷を経た昭和期以降の発想に位置づけられると述べます

 

 このように本公開講座は、国語科の教育内容としてたしかに存在する詩創作について、具体的な実践と、その実践のもつ意味合いを構造化したかたちで見ることができます。なおワークショップそのものへの参加は〆切られていますが、当日の講座の様子はYouTubeLiveにて上記チャンネルで配信予定です(事前申し込み不要)。

 

 また公開講座Iは、「国語科における「論理」教育の射程」というテーマで実施予定です。この講座は、学習指導要領において「情報の扱い方」が追加された状況をふまえて、学習者が論理を(書かれている説明的文章などから)「読み取る」だけでなく、みずから論理を「切り結ぶ」教育のあり方を明らかにすることをめざしています。打ち合わせの様子をすこし拝見したのですが、そこでは「論理」とはそもそもどういうものか、「論理」の指導とその他の領域はどのように関わりあって学習者のことばの力を伸ばしていくのか、といった点まで議論が及んでいました*2。とても刺激的な時間になりそうです。こちらの講座はZoomウェビナーを使って行います。おなじく事前申し込みは不要です(以下の実行委員会twitterのリンク内、公開講座I「ウェビナー入口」からどうぞ)。

 

 

 

 いずれも、現場で実践にあたられている先生方、これらの分野に関心がある方、とても有意義な時間になると思います。直前のお知らせですが、ぜひごらんください。

*1:前回の大会(課題研究発表のみ実施)については、こちらの記事をごらんください。

*2:あくまで打ち合わせ段階なので、当日おなじ話題が出るかはわかりませんが……。