めらブログ

国語科の文法教育、作文教育、そのほか教育に関すること。ブログ名をすこし変えました(本名がずっと出るのがはずかしくなって。。。)

課題研究発表に登壇したレポ(成果と反省とこれから)

はじめに

楽しかった学会も終わり、きょうから通常業務です。通常業務といいながら、緊急事態宣言なので対面授業はありませんが。正直体力的にはハードだったのでありがたい……(LMS対応はいつもどおりやっています)。

 

さて、実行委員会および登壇者として関わった第140回全国大学国語教育学会春期大会(オンライン)が、ぶじ閉幕しました。当学会のオンライン大会は実質3回目ということで、だいぶノウハウも蓄積されてきた感があります(それでも開会中の緊張感はなかなかのものですが)。

 

今回はその中でも、自分が深く関わった課題研究発表について書き残しておきたいと思います。ほんとうはSpatialChatという雑談サービスを用いた「若手研究交流企画」についても書きたいんですが、それはオンライン学会の運営に関する話が主になるので、また別ポストで。なお課題研究発表の概要は、1つ前のポスト参照です。

 

mera85326b.hateblo.jp

 

課題研究発表について

課題研究発表「国語教育史研究(資料研究)の可能性・方向性を再考する」に登壇しました。わたしの担当は「教科書史・教科内容史研究の可能性・方向性―文法教育史に関する研究を事例として-」で、教科書分析をやってきた自分の仕事をもとに、歴史研究から学べる方法知とは何か? ということについて論じるのが目的でした。

 

当日の発表資料はこちらからご覧になれます。

researchmap.jp

 

自分の発表内容については上記をご覧いただくとして、ここでは当日の質疑応答の補遺について書いていきたいと思います。

 

(1)教師のレディネスについての気づき

当日のご質問で多かったのは、「文の成分優先の方針がうまくいかなかったのは、生徒側の問題というより、教える側の問題なのでは?」というものでした。つまり、内容の変化に対して、教師側の準備が追いついていなかったのではないか、ということでした。この観点は正直なところ抜けていました。これまでずっと学習者側の記述を探していたのですが、そちらの観点に注目すれば、またちがった史料の読み方ができそうです。これは本当にありがたいご指摘でした。

 

またそのほかにも、文法教育の課題(今日的なものを含む)について言葉にする機会をいただいて、わたし自身も論点整理ができました(夕方の「反省会」では、大和大学の舟橋先生からも貴重なお話をたくさんいただきました)。ご質問くださったみなさま、どうもありがとうございました。

 

(2)もっと「国語教育史研究とは」という議論を?

一方、テーマに対して、内容でももっと方法知というか、「そもそも国語教育史とは?」ということにふれるべきではないかというご指摘を(非公式の場ですが)いただきました。たとえば以下のツイート。

 

 

 

 

 

これはまったくもってありうるご指摘で、もっと発表の軸足を「方法知」を含めた国語教育史をメタ的に見る話におくかたちもありえたかもしれません。実際、ご質問の内容も、前半の「内容知」としての研究内容に関するものが多かったような気がします。そうだとすれば、もっと議論そのものを「方法知」やそれに類するものにおいて、議論を焦点化させるべきだったかもしれません。

 

今回このような構成にした意図は、内容知としての歴史研究を実際に行う中で、実際に駆動している方法知のすがたを示すことができないか、というところにありました。方法知は、定義からいって言語化するのが難しいものです。もっといえば方法知は、「チェスでいい手が見つかる」というように、実際の思考や行動の中で「駆動している」ものです。その生き生きとしたすがたを捉えるには、話題じたいは内容知だけれども、その内容知を論じている姿のなかに垣間見えてくるものを拾い上げるのがよいのではないか……というのがわたしたちの意図でした。わたしのほかの登壇者への質問(あらためて要約すると「知見が知見として成立するときとしないときの差は何か」といったこと)も、それぞれの登壇者の内容知をしっかり議論したうえで、内容知が成立するときと成立しないときの違いを明らかにできれば、「ではそこで方法知はどんなふうに働いているのか」ということを考える糸口になるのではないかと考えたからでした。

 

ただ、もっと真正面から「方法知について語る(語ろうとする)」ことで、もっと充実した議論ができたのかもしれません。内容知から方法知へと議論を「テイクオフ」させるために、もっと助走の距離をちぢめて「飛ぼうとしてみる=方法知を言語化しようとしてみる」チャレンジが必要ではないか、ということは、今後の自分の課題にしたいと思います。ありがとうございました!

 

*その意味では、本番中にとりあげた石田先生の「歴史研究者が現代の教育のプロジェクトに関わるとき、どういうスタンスで関わってるのか」という質問には、もっとクリアに答えられるべきでした……これはまさに「テイクオフ」するいいチャンスだったのに……不覚。また考えます。

 

(3)あらためて、研究へのモチベーション

ここまで述べてきたように、発表と質疑応答じたい、自分自身にとって非常に得るところが大きい時間でした。が、何よりうれしかったのは、そのあとの交流の時間(若手研究交流企画など)で、わざわざ私のほうに来て「さっきの企画、おもしろかったです」と声をかけてくれる人が何人もいたことです。今回の話はじぶんの博論がベースになっているので、出身の研究室に入って11年目、自分の研究のキャリアをほとんどを費やしてきた内容です。その内容を、今回はじめてまとまったかたちで学会で話すチャンスをいただいて、さらにこういうレスポンスをいただけるのは、本当に励みになります。コロナやそれに関する授業対応などで日常のことに追われる日々ですが(きょうも帰宅してから授業動画を2本撮りました 笑)、あらためてもっと研究がんばろう、と思えました。これに飽き足らず、さらにおもしろい研究ができるようにしていきたいと思います。

 

あらためて、当日聞いてくださったり、貴重なご意見をくださったりしたみなさま、本当にどうもありがとうございました。